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3    固体地球研究センターの様々な面について

| 3.1 建物 | 3.2 研究支援職員 | 3.3 大学院生 | 3.4 外国人研究員 | 3.5 共同利用研究員 | 3.6 図書室と計算機ネットワーク |

3.1    建物

ISEIの建物の改良は前回の外部評価報告書 (1994) における重要な指摘の一つであった. 医学部付属施設の医師達の岡山のメインキャンパスへの移動によって, ISEIは研究棟内に面積をふやした. さらに1998年にはISEIのために素晴らしい新しい建物が建設された.このことにより, ISEIの研究環境はスペー スという面では劇的な改善を受けた.我々が訪問した時, 新しい建物も古い建物も大変良好な状態にあった. PMLはその装置類をよく計画されたクリーンルームに一貫性を保って配置している. しかし他の部門ではいくつかの装置がばらばらに置かれていたり孤立したりしている.ISEIは現在では (小さな実験室も含めれば) 5つの建物にわたる大きく複雑な組織になっているので,いかにして研究者間に密接な会話を維持するかは重大な問題である. いくつかの装置や実験室の再配置がこのことに助けになるかも知れない(例えばセンター全体の分析装置を設置するなど).

3.2    研究支援職員

前回の報告書には以下のように述べている:「最も重要な問題の一つは技 術系職員の不足であると思われる. ISEIの現在の教官数は, 一連の最新式測定 器を最高水準に保つためには大幅に不足している. また技術支援の職員が存在 しないことに緊急に手を打つ必要がある. アメリカやヨーロッパでは, 能力の ある技術職員なしに最新の実験室が活動できるとは考えられない. もしこれが 日本の研究所に共通の問題であるなら文部省は早急に対応策を講ずるべきであ る. 」
ISEIは改組された時に技術支援職員の定員増を得ていないので, 我々は上に引用した文章をくり返さざるを得ない. ただしこの状況はISEIにいくつかの一時的なポスト (COE博士研究員) がついたことで部分的には改善された. センターの研究活動のかなりの部分や測定機器の設置, 較正, 維持などがCOE研究員によってささえられている. 現在のシステムでは, COE研究員は3年以上その地位に留まることはできない. これは若い研究者の流動化をはかるという意味では妥当であるが, 彼らが実験室を維持するという役割りを果たしていることから考えると, これらCOE研究員の任期は延長すべきであるかも知れない.
行政や予算上の制約から実現は困難かもしれないが, このように高度な装置類を維持するための最も有効な手段は, 献身的な研究者や学生 (ISEIに存在する) と数人 (この場合は2人ぐらい) の, 全ての装置類に精通し, 改造の歴史も全て知っている, 高い技能を持った技術者の絶えざる努力の組み合わせによって実現することは強調しておきたい. この様な正規技術職員の役割が, 短期契約のCOE研究員などのそれと較べるべきものでないことはいうまでもない.

3.3    大学院生

大学院生が十分にいないというのはISEIに絶えずついてまわる困難の一つである.このことは基本的にはISEIが小さな町にあることに原因がある. 岡山大学のメインキャンパスには地球科学科が存在するが, 過去5年間にメインキャンパスからISEIに来た学生がごく少ないことを考えるとISEIにとって助けになっていない.最近多くの大学で, 学部学生の数は変えないまま大学院教育を大幅に拡充していることを考えると, ISEIにおける大学院生の不足は今後も続くと思われる. ISEIが日本における固体地球科学における物質研究の中心であることを考えると,大学院生が充分にいないことは日本の科学界にとって大きな損失である.

3.4    外国人研究員

過去5年間にISEIは約20名の外国人研究者をCOE関連又は日本学術振興会の外国人特別研究員として受け入れた. マイケル・ウォルターはもともとCOE外国人研究員として来日し, 後にISEIの助教授になった. 薛献宇 (神崎夫人) はCOE研究員としてNMR実験室を動かしている. 多くの外国人研究者がいることでISEIは真に国際的な機関となった. ISEIが大きな都市から遠く離れた場所にあることや, 歴史がそれ程古くないことを考えると, 全教官とポスドク研究者が少なくとも2ヶ国語 (日本語と英語) を使いこなすというのは驚くべきことである. これは ISEIが多くの外国人研究者を受け入れたこと, 三朝において過去5年間に2回国際シンポジウムを開催したことに関係していよう.

3.5    共同利用研究員

ISEIは全国的な共同利用研究者のための機関からより高度な研究を推進する組織に変化した. このように重点が変わったことに伴い, ISEIの共同利用研究員の数は過去5年間に減少してきた. しかし (ISEIに滞在しISEIの研究者と共同研究を実施する) 嘱託研究員の数は増加している. 前回の評価報告書では, ISEIの教官が, 技官による補助なしに非常に多くの共同利用研究員 (年間約200人) に対応することにつらい思いをしていると書かれていた. 我々は, 多数の共同利用研究員から比較少数 (年間50-70人) の嘱託研究員に重点が移ったことは, ISEIの研究の質を高めるのに役立っていると考える.

3.6    図書室と計算機ネットワーク

前回の報告書において, ISEIの図書室が貧弱であることが指摘されていたが,図書室の状態はそれ以来さらに悪化したようである. 過去5年間に科学雑誌の購読には大きな変化がおこった. 現在では物理学と化学の重要な雑誌のかなりがインターネット経由でアクセスできる. 地球科学の雑誌についてもかなりの部分がインターネットからダウンロード可能になった. さらに, 近い将来にはディジタル誌 (例えば1999年に発刊されたG-cubed) が通常の雑誌にとって替わるかも知れない. このような最近の情勢と小さな孤立した研究機関の予算の制約を考えると, ISEIの図書室により多くの投資をすることは勧められない. 実際上もっと重要なことは, ISEIと岡山大学のメインキャンパスとの間 (さらに恐らく大阪大学まで) の計算機ネットワークの容量を増強することである.


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